1人日本アルプス縦断 後編

某縦断レース関連

(前編→こちら)
まさかここにたどり着けるとは…大浜海岸。熱い夏休みが終了。
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※会社の社内報用に書いた原稿を、ほぼそのまま載せています。


5日目
8/15(木) 目が覚めたら、意外にも天気がよかった。天気が悪くなるのは午後以降らしい。疲労が抜けたせいか、前向きな気持ちになることが出来て、なんとか縦走を継続する方法はないかと考えた。1日このまま市野瀬で滞在し、最もリスクの高い台風下での幕営を回避、エスケープ地点を複数設定しておけば可能性はあるのでは、と考えた。家族にもこの旨を伝え、夕方までは休息に努めた(せっかくなので分杭峠観光へ)。あわせて、上司に休み明けの出勤が1日遅れると連絡し、ありがたく承諾してもらった。この日は、仙丈ヶ岳への登りの中間地点にある松峰避難小屋で就寝。
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ザックのジッパーが故障しかなり気を使った。駒ヶ根で調達したジェントスのヘッドライトも、2hくらいで光量が一気に低下するので使い物にならず、結局残り全てハンドライトで凌いだ。
6日目
8/16(金) 1時過ぎに起きてみると、台風のピークのはずがあまり風は強くない?そのまま仙丈ヶ岳へ出発した。森林限界を越えた途端、状況は一変した。真っ暗闇の中で一人、強烈な風雨にさらされていることに怖さを感じ、進むことを何度かためらった。なんとか耐風姿勢と灌木の影で風をやり過ごしながら、最も状況が悪かった仙丈ヶ岳を通過、そのまま樹林帯に走りこんだ。樹林帯に入ってしまえば、進めないという風ではなかったが、風雨が容赦なく体温を奪う。こんなこともあろうかと用意していた保温用マット2枚(普段は1枚)で凌ぎつつ、三峰岳、塩見岳と厳しいところを通過した。誰とも会わないだろうと思ったが、塩見小屋までで3人とスライド。三伏峠で補給し、そのまま惰性でピークをいくつか越えた。17時過ぎに荒川岳手前の高山裏避難小屋に到着し、幕営。装備が濡れていたので睡眠の質は相当低めだった。一度は諦めた完走が少し見えた。
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7日目
8/17(土) 2時過ぎに行動開始。いよいよ南アルプスを下りる日である。真っ暗闇の中、荒川岳のピークを通過した。台風の影響は長く残り、結局、赤石岳を過ぎるまでは強い風が吹いていた。南アルプス最後の3000m峰である聖岳の登りでは、この縦走で初めて足の疲労を感じた。聖を過ぎたら、あとは僅かな登りとひたすら長い下りである。怪我でリタイアすることがないように、足運びに注意して水量の多い沢沿いの登山道を下った。まだまだ明るい17時前に南アルプスの玄関口である畑薙ダムに下山。すでに静岡市葵区、ここまで来たかと感無量だった。
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畑薙ダムから大浜海岸までの舗装路は全コースの中で唯一、通ったことがない区間だった。85kmという長いロードが始まった。寝てしまうと動けなくなる可能性があるので、明朝ゴールを目指して徹夜で走ることにした。いつの間にか寝ながら走れるようになっていたし、幾度となく現れる沢の音が楽しい音楽のように聞こえるようにもなっていた。実際にこの区間の記憶はほとんど残っていない。
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8日目
8/18(日) 日が明ける頃には静岡市街の寸前、太平洋まで30kmの地点にいた。普段ならわずか30kmであるが、ボロボロの体にはここからが長かった。感覚的にはキロ6分ペースでも時計はキロ10しか示さなかったし、散歩している方々との距離が広がらない。そして畑薙ダムから60km以上走って、ようやく一軒目のコンビニであるファミリーマートにたどり着いた。こんなコンビニ砂漠がまだ日本にあるのだなとしみじみ思った。コンビニで美味しいものを食べても体は復活しなかったが、残りは15kmになった。
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最終日の静岡市街はこの一週間で最も暑かったようで、静岡駅(残り5km)以降はまともに走った時間より、コンビニや自動販売機の前にいた時間の方が長かった。なんとか倒れずに海岸に到着。でも、何かが違う。通りすがりの人に大浜海岸の場所を尋ねて、1km西と判明。10分後に晴れてフィニッシュとなった。そこにはTJAR本戦のような横断幕や声援を送ってくれる人の姿はなかったが、特別な場所に感じられた(ビーチバレーの大会はやっていた)。替えの靴が無かったので波打ち際には近寄らなかった、というか暑さにやられていたので少しでも早く日陰に避難したかった。
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居合わせた親子に写真を撮ってもらってから、公衆トイレ脇の日陰に避難。座り込んだら抜け殻のようになりしばらく立ち上がることができなかった。日本縦断の実感はあまりなく、終わったことの安堵感の方がはるかに大きかった。
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落ち着いてからバス停まで移動し、静岡駅内で食事を済ませて新幹線で帰路についた。久々に再開した3歳の息子からは「もう行かないでね」と言われた。当分お盆休みは家族とのんびり過ごしたい。
落ち着いたら、また他のことにチャレンジしてみたい。
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数日後の足。
ログ(strava)
①start ~ 北ア~沢渡 → こちら
②沢渡 ~ 中ア ~菅野台 →こちら
③菅野台 ~ 市野瀬 → こちら
④市野瀬 ~ 畑薙第一ダム →こちら
⑤畑薙第一ダム ~ 大浜海岸 →こちら
行程
所要時間:7日10時間40分(含む、市野瀬での停滞24時間)
8/11(日) 晴れ
0:00 早月川河口
7:36 剣岳
12:42 一の越山荘
17:47 スゴ乗越小屋
8/12(月) 晴れ
1:00 スゴ乗越小屋
7:55 黒部五郎小舎
13:17 槍ヶ岳山荘
17:41 上高地
20:09 沢渡
8/13 (火) 晴れ
2:13 沢渡
6:14 境峠
11:51 木曽駒高原スキー場
15:51 木曽駒頂上山荘
8/14(水) 風雨 のち 晴れ
23:08 木曽駒頂上山荘
1:28 檜尾岳
5:04 空木岳
8:32 菅野台バス停
15:29 市野瀬
18:30 夏祭り見物
8/15(木) 晴れ のち風雨
AM シャトルバス利用にて分杭峠観光
15:00 市野瀬
17:34 松峯小屋
8/16(金) 台風による風雨
2:15 松峯小屋
4:26 仙丈ヶ岳
8:33 三峰岳
12:07 塩見岳
14:18 三伏峠
17:14 高山裏避難小屋
8/17(土) 強風 のち晴れ
2:15 高山裏避難小屋
5:51 赤石岳
9:54 聖岳
13:16 茶臼小屋
16:57 畑薙第一ダム
22:31 井川駅
8/18(日) 晴れ
0:48 富士見峠
5:31 玉機橋
9:17 静岡駅
10:40 大浜海岸

コメント

  1. ぺぺ姉 より:

    いまさらながら読んだよ
    私も感動した夏だったよ!
    おつかれ

  2. まーはー より:

    本戦出場がベストでしたが、今振り返っても一人TJARは悪くなかったです。良い経験になりました!!

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